みちこの幕末日記

   世に生を得るは事を成すにあり。

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Monthly Archives: 4月 2010

京都新聞に俳優の栗塚旭さんの記事が連載されました。今も、現役の俳優さんで
す。はつらつとしておられます。お会いしてサインも握手もして頂きました。
ご縁があって三回お会いするチャンスがありました。そのお人柄、温かいお話し
ぶりに心が和みます。だからでしょう、新選組・鬼の副長土方のイメージが
狂うんですよね。

 さて、その新聞記事を私の興味がある箇所だけを抜粋してみました。

1965年「新撰組血風録」の主役は品川隆二さんに決まっていたのですが、
突然に降板したため急遽、栗塚さんに代役が回ってきたという—、これは驚き
でした。品川さんも素敵な俳優さんですが、土方の役柄とは少し違うような感じ
がしますね。

司馬遼太郎の許可を頂くため、カツラと衣装を付け、司馬遼太郎夫妻の待つ
料亭へと向かいました。栗塚さんの挨拶も終わらぬうち、奥さまが「まー」とにっ
こりされ、司馬先生とうなずき合う—、良いシーンですね。まるでお芝居のワ
ン・シーンのよう、ご夫妻のご満悦ぶりが目に見えるようです。

沖田総司役の島田順司さん、斎藤一役の左右田一平さん、何れも無名の新人です。
従来の新撰組劇の殻を破ったすごくフレッシュなトリオだったと思います。私は
テレビにかじりついて見ていました。

当時、京都市内には時代劇ロケのできる場所がたくさんありました。
早朝なら三条大橋の上でも撮影ができました。のんびりした時代ですね。今や、
京都の中心部でのロケなど考えられません。

撮影初日は、いきなり「池田屋」で、取り壊しが決まっている祇園のお茶屋
さんを一軒丸ごと借りての撮影です。派手に壊せると、みんな気合が入り、柱に
斬り付ける、手すりや障子がバリバリ壊されていく迫力のある演技でした。真夏
のシーンなのに冬のロケで、吐く息が白く映ったのはご愛嬌でした。すさまじい
斬り合いをリアルに再現できました。

栗塚さんは「ドラマの土方が28歳で当時の私と同年齢、自然体でアカの
ついていない土方を演じられました。素の演技が、土方の新しいイメージを切り
開いたと自負しています。従来なかった女性ファンも付き、視聴率は30%に達
したようです。映画や舞台より、ずっと格下とみなされていたテレビ時代劇が一
瞬、注目されるきっかけを作ったと評価されました。そして、決定的だったのは、
脚本家・結束信二さんとの出会いでありました」とおっしゃっておられます。

前回の「龍馬伝」は、岡田以蔵の本間精一郎・暗殺が出てきていました。

京都・高瀬川沿いにある「本間精一郎遭難之地」の石碑を右手に狭い路地に入ると、その時の以蔵がつけたという刀痕が残っています。初めて見たのは、もう十数年前のこと。鋭く刻まれたその刀痕は、今では人に触られて丸みがでてきています。しかし、生々しさは今も変わらず、、、百四十年前の惨劇を彷彿とさせてくれます。

産経ニュース、「幕末から学ぶ現在 岡田以蔵」東大教授・山内昌之さんのコラムをご紹介させて頂きます。

■暗殺と政治の間

 フランス革命でマラーを殺害したシャルロット・コルデー、ロシア皇帝アレクサンドル2世を暗殺したポーランド人イグナツィ・フリニェヴィエツキなど、革命の歴史とテロリズムの活動は不可分である。幕末にも要人を暗殺した「人斬り」は多い。
 肥後の河上彦斎(げんさい)、薩摩の田中新兵衛はそれぞれ、佐久間象山や姉小路公知(あねがこうじきんとも)を暗殺した一件で知られる。

 ≪暗殺繰り返す日々≫

 革命期には、政治目的を実現する手段として限定されたテロと、やみくもに政敵とおぼしき人物を暗殺する行為との間に確たる違いを見いだすことはむずかしい。前者はやむにやまれず歴史を動かすために仕掛ける行動であり、後者はときに自分も理由を分からぬままに人の教唆で殺害する陰鬱な仕業である。
 前者の例が薩摩の中村半次郎だとすれば、後者の典型は土佐の岡田以蔵ではなかろうか。陽性の南国人気質を十分にもつ以蔵が世界史でも屈指のテロリストに変貌する様は、維新史を見ていてもやりきれない思いがする。
 足軽身分の以蔵を引き立てたのは、武市半平太(瑞山)にほかならない。武市は万延元(1860)年に以蔵を連れて中国と九州を回るが、やがて武市の結成した土佐勤王党に加盟した。私は直接に確認していないが、その後連判から以蔵の名が削られたという指摘もある。
 だとすれば、以蔵がしばしば武市の指示で暗殺を繰り返した点を考えると、勤王党の連帯責任を避けるための方便だったのかもしれない。以蔵は武市を尊敬していたにせよ、武市のほうは無教養のテロリスト以蔵に利用価値を見いだしていたのだろう。
 NHK大河ドラマ『龍馬伝』では、以蔵に扮する佐藤健君のすがるような眼差しが印象的である。実際の以蔵の心中でも、恩師への信頼と懐疑がいつも交差していたことだろう。

≪地獄から救われる機会≫

 政治には多少の犠牲者が出ることは避けられない。それにしても、武市の暗いニヒリズムは以蔵をますます狷介(けんかい)な性格に育てたのではなかろうか。以蔵に殺人の無間地獄から救われる機会があったとすれば、坂本龍馬の紹介で勝海舟の家に住みこみ、京都でも身辺警固に当たった時期であろう。
 小説だが、子母沢寛の『勝海舟』は以蔵が海舟の薫陶で少しずつ明るさを取り戻し、平穏な人生や学問修業にも目覚めるあたりを温かい筆致で描いている。
 しかし、以蔵は武市と土佐のしがらみから逃れられず京都で捕縛され、政変の起きた土佐へ送られた。これを知った武市は、ある手紙に「あのような安方(あほう)」は早々と死ねばよいと書いたように、自分が指図した暗殺の真相が露顕することを恐れた。
 武市は、以蔵の自供で勤王党による暗殺テロの真相が漏れるのを恐れ、自分に信服した牢役人を使って以蔵に毒飼いをさせたという説も根強い。毒を盛られた以蔵は師の冷酷さに憤って万事を自白し、武市をも死出の道連れにしたという暗い説もあながち否定できない。
 武市は吉田東洋暗殺で火ぶたを切った土佐テロリズムの元凶であるから、その政治責任は免れなかった。巨大な変革期にはどの国でも、政治とテロ、陰謀と暗殺、交渉と衝突などは入り組んで進行する。それでも、以蔵のように暗殺テロの専門家としてだけ、政治運動に関与した例は少ない。

≪偶然に翻弄された人生≫

 薩摩の中村半次郎などは確かに政敵を暗殺した事実も一回ほど確認されるが、全体としては各藩にも知られた談判や周旋の士としても成長していった。2人の差は、西郷吉之助(隆盛)と武市半平太の個性の違いでもあろうか。
 以蔵にも幕府の神戸海軍修練所や長崎の海援隊で勝海舟や龍馬の下で飛躍する可能性もあったのだ。人の出会いや歴史の偶然が人を不幸にする酷さを思わざるをえない。
                   ◇
【プロフィル】岡田以蔵

 おかだ・いぞう 天保9(1838)年、土佐(高知県)の郷士の家に生まれる。江戸の桃井春蔵に剣術を学ぶ。武市半平太に従って九州などを回遊し、のち土佐勤王党に加わる。京都で薩摩の田中新兵衛らとともに天誅行動の急先鋒(となり、多くの暗殺事件に関与、「人斬り以蔵」と呼ばれた。藩吏に捕らえられて土佐に送られ、慶応元(1865)年、処刑された。享年28。

「龍馬の流儀―幕末を駆け抜けたヒーローの履歴書」 (単行本)   星 亮一 (著) 光人社 1800円+税

 自主独立の精神と行動力、そして人脈を駆使して時代に風穴を開けた龍馬。土
佐の町人郷士に過ぎなかった男は、なぜ幕末のヒーローになれたのだろう
か?彼がいかにして天下一流の人物と対等に渡り合い、いかにして世界に視野を
広げ、い かにして常識にとらわれない柔軟な発想を培ったのか―新生日本の幸
福を全力で追い求めた男が駆け抜けた33年の短くも激しい人生の航跡をたどる。
            まえがきの著者の言葉に「現代の若者よ、龍馬のように飛び跳ねるべし。
            年配の人々も負けてはならない」とあります。イラストも楽しく心躍らせて
            ゆったりと龍馬伝に浸れるお勧めの一冊。

「会津維新銘々伝—歴史の敗者が立ち上がる時」 (単行本)   星 亮一 (著) 河出書房新社 1600円+税

 斗南の地の挙藩流罪となった悲劇の会津明治維新。ある者は開拓に、ある者は
西南戦争に、ある者は新政府に、ある者は反逆者に。敗者も立ち上がった日本近代の実像。
                心に奥深く残る会津の十三人、いずれも潔いその生涯。
                知ってよかったと思わせてくれます。

「徳川家が見た幕末維新」 (文春新書) (新書)  徳川 宗英 (著) 文藝春秋¥ 914

 ペリー来航から十五年で幕府は倒れた。しかし「賊軍」の藩主らは一人も殺さ
れず慶喜は後に公爵に叙せられる。大転換期の決断力とは。徳川家から見ると幕
末維新は一層面白い。
               徳川家の手前みそという感じは拭えませんが、
               264年間続いた名家の内情を知り、楽しく読め
               ました。
  
「その時歴史は動かなかった!?」 (PHP新書) (新書) 鈴木 眞哉 (著) PHP研究所¥ 777

 歴史を動かしたとされる事件や合戦、人物の機略や行動は、じつのところアヤ
シイものばかりなのだ。あなたの“歴史常識”は、はたして大丈夫か?本書を読
めば歴史の見方、とらえ方がよくわかる。
              47の日本史の大事件を明快に遊び心をプラ
              スしての解説が楽しい一冊。

「鳥羽伏見の戦い―幕府の命運を決した四日間 」(中公新書) (新書) 野口 武彦 (著) 中央公論新社 ¥ 903

 「歴史にイフはない」なんて誰が言ったのか―幕府の命運を決した鳥羽伏見の四
日間の戦いは、さまざまな偶然に満ちている。なぜ幕府歩兵隊の銃は装弾してい
なかったか、吹きつける北風は幕府軍にどう影響したのか、そして慶喜の判断は
なぜ揺れ動いたのか―。誰もがその名を知っているけれど、詳しくは知らないこ
の戦いをドキュメンタリータッチでたどる。

「新選組と幕末の京都」 (単行本)  ユニプラン編集部 (編集) ¥ 1,300
こんな史跡を知っていますか?新選組と幕末の京都を探索する最強の『歩く』ガイド!

             唸ってしまうほどの隙のない充実した京都の史跡め
             ぐり本です。薄いのでバッグにも入ります。必需品となりそう。