みちこの幕末日記

   世に生を得るは事を成すにあり。

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「最後の幕臣 小栗上野介」 星亮一・著 ちくま文庫

幕末維新、惜しむべき人物が露と消えた。その偉業も忘れ去られている。
勝者は永遠だが、敗者は歴史の霞の中に見え隠れしている。
同時代に生きた傑物達、共に日本のために努力したのであれば、
あまりにも不平等である。小栗忠順、その人である。
彼の偉業は声を高らかにして数えもできる。
明治に生きながらえていれば、間違いなく勝者であった。

終焉の地を訪れる著者の紀行文から始まり、その地での斬首までの六十五日間の不可思議な出来事、推理小説を読むような緊迫感が広がる。
それが討幕軍の罠だと悟ったのは時すでに遅し、骨の髄まで幕臣であった小栗の慢心か、最後の場面が詳しく説明され、今さながら悔しい思いにかられた。
その後、家族のみ会津に逃れるが、その苦難の道筋は読みながらため息が出た。時代背景である会津戦争も簡潔で的確に描かれている。
多くの関係書物からの適切な引用も参考になった。

遣米使節でのアメリカ体験があった。幕府の遺産として明治政府に
受け継がれ近代日本に重要な役割を果たす横須賀造船所の建設や商社の設立、
数多い小栗の偉業にはほれぼれする。フランス公使ロッシュや
横須賀造船所建設の責任者ヴェルニーとの交遊、なるほどと頷く勝海舟との確執、
緻密に構成された本書から、小栗がとても身近に感じられる。

惜しい人を亡くしたという簡単なことでは済まされない、小栗の残酷な死。
小栗が前面に立ちはだかれば薩長は危なかっただろう。
「薩長藩閥政治ではなく、日本列島をまんべんなく結集した政治体制が
できていたのではないか」、著者の言葉が力強い。

盛り上がる後半、会津藩・秋月悌次郎との友情が光った。
会津へと小栗が身を寄せていたら人生はまた違う方向へと進んで
いたかもしれない。

読み終えて、清々しい思いが残るのは、著者が小栗終焉の地、上州権田村を
訪れた紀行文が心を癒してくれたのだと思う。余韻が残りました。

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